アラカルト

奇跡の船「宗谷」と、不可能を可能にした西堀栄三郎さん

今日はちょっと愕然としたことがありました。若手の先生と職員さんに「西堀栄三郎さん」のことを訪ねたら、二人とも知らないとの回答。研究者・人生の先達として尊敬する人の一人ですが、もう過去の人になっているようです。第1次南極観測隊の副隊長兼越冬隊長をはじめとする数々の業績があり、年配者で知らない人はいないと思いますが、若者に伝えるツールがすでにないようです。滋賀県には彼の業績を伝える「西堀栄三郎記念・探検の殿堂」という施設があり知人が学芸員を務めていますが、やはり広報不足なんでしょうねぇ。大ヒットした映画『南極物語』は1983年ですし、関連するキムタク主演のドラマ『南極大陸』は調べてみると2011年ですから、放送されて10年も経つんですね…。時代は変わってしまいます。通常であれば誰もが諦める状況下でも、答えを導き出していく精神はいつも心の指針にしています。彼の著書に『石橋を叩けば渡れない』というものがあります。慎重なことがいけないということはなく、慎重になりすぎると「渡れるものも渡れなくなってしまう」ということです。逆に、何とかなると思って渡ってみる、あるいは思い切って飛び越えてしまえば不安もなくなります。できない言い訳をするのではなく、どうしたらできるのかを考えることが「知恵」であると彼はいいます。マイナス25度の極限状態で、研究室が火事にあい、ブリザードで吹き飛ばされても、あるもので研究道具を再生し、世界を驚かす成果を出してきた彼ならではの言霊です。私は西堀さんはもちろんですが、彼が南極に行ったときに乗っていた船「宗谷」も大好きです。日本を代表する船と聞かれたら、恐らく「宗谷」と答えるでしょう。今はお台場の「船の科学館」にひっそりと係留されていますが、この船が南極に行く前、戦時中ラバウルやミッドウェーなど第一線で活躍するも沈没されずに戻ってきた「奇跡の船」だと知る人も少なくなってきているのではないでしょうか。戦艦大和などよりもずっと日本人に貢献してきた船です。調べてみると、2015年に保存修復がされたようで、嬉しい限りです。25年くらい前でしょうか、私はこの科学館の展示リニューアルプランを担当した縁もあるので(バブル崩壊で予算が結局つかず幻となりましたけど…)、久しぶりにお台場に行ってみたい。(※写真は「船の科学館」公式HPより)

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│-│-│2021/05/11(火) 22:51

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