アラカルト

山と日本人

文科省の調査で、昨年度の小中学校の不登校者が約20万人で、また小中高生の自殺者が415人と最多であったとの発表がありました。子ども達に何があったのでしょうか。コロナ禍で生活が激変し、うまく対応しきれない部分も大きかったのかも知れません。それは人ごとではありません。一人ひとりが輝ける環境とは何か、あとそれ以前に未来に希望が持てる社会をどう構築していくのかということも問いかけられているように思いました。◆夏休みから少しずつ読み進めていた本を読了しました。恐らく、今年一番の本です(あくまで私にとってということですが)。「神体山(しんたいざん)」というのは、固有名詞ではなく、「神奈備山」や「神山」など、昔から人々の信仰を集めた山のことです。とくに、滋賀・京都・奈良の神体山を中心に、日本人の原始信仰について紐解いています。1971年に書かれた原本を、2001年に復刻したもの。作者の景山氏は美術史を専門としつつも、この本の内容の多くは民俗学に関するものとなっています。面白いのは、史学系の出身であるにも関わらず、民俗学を高く評価している点です。私はこれまで、民俗学を頭からけなす歴史学者に数多く会ってきたので、とても意外でした。日本人は古来より山を神として信仰の対象としてきましたが、今ではそうした概念すら消えかかりかけています。関西に住み始めて、そうした日本人の原始信仰を身近に感じるようになり、時間がある範囲で少しずつ勉強し、ようやくこの本にたどり着いた感じです。日本人にとって山とは地域基盤であり精神的支柱でもあります。ある意味地域研究のプラットフォームなのに、みんなそれを忘れているように感じます。時間はかかっても、景山氏の足跡をトレースしていきたいと考えています。そういえば、山は魂を再生する力があるとも考えられてきました。子ども達の魂が、より良き魂に転生することを心より祈ります。

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│-│-│2021/10/13(水) 20:20

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