アラカルト

方位7度差の謎

昨夜の展示論授業で「見世物の源流と今日」ということで、先週学生アカデミーで銀賞をとった金森慧さんの「Origami」(CG作品)の話題を出したら70人中1人しか知らなかったのには驚きました。なので動画を見せたんですが、スマホ全盛の時代でも興味関心によって情報は落ちていくものだと痛感しました。◆昨日は守山で会議があったので、ようやく行きたかった伊勢遺跡史跡公園(弥生時代の遺跡)に寄ってきました。昨年10月にオープンしたばかりですが、立地の問題なのか、集客に課題を抱えているようでした。館長さんも困っていたようなので解決策をいろいろ話したりしました。やっぱり復元施設が欲しいのと、展示館もちょっと目立たない(建築学的にはすごいようですが…)。カフェ・レストランもないし、一回来たらもう来なくなる典型例のように感じました。ただ、遺跡としては国内でも類例がなく、建物が円形に作られた特異なもの。しかも、中核施設の方位が7度ずれているという不思議。遺跡を見学したときにはさっぱり理由がわかりませんでしたが、帰りの運転中に「ハッ」と気がつきました。「天体観測」です。たまたま、今月からNHKで『チ。-地球の運動について-』というアニメ番組が放送中でそれを面白く拝見していますが、これは15世紀のヨーロッパにおいて、タブーとされた「地動説」を命がけで研究する人たちの物語です。日本の縄文時代には、岐阜の金山巨石群(岩屋岩蔭遺跡)に代表されるように、すでに精密な天体観測ができる装置があったようです。八日市にある太郎坊の割石は夏至に合わせて設計されたものと私は考えています。円形とは、太陽や蛇が日本ではモチーフの素材となりますが、近江八幡や守山など平地が広がり周囲に特徴的な山がある環境というのは天体観測にぴったりです。しかも、守山には三上山があり、位置関係を特定するには絶好のロケーションです、西暦100年というのは争いも落ち着いていた時期のようで、天文学が発展したのではないでしょうか。ですので、正確な方位を示す楼閣は天文用、7度ずれた施設は信仰用(政治用)と、それぞれの用途が異なっていたと考えれば納得できます。陰陽師は毎日星を見ていたわけですから、その走りのような気もします。私は天文の知識はゼロなので、少なくとも天文系や陰陽道・占星術系の専門化に見てもらう必要性を感じました。お金があれば周囲の土地を買い取って全部復元して確認してみたい。なんて、ちょっとテレビの見過ぎでしょうか。というか、現代は明るすぎて星が見えないし。

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│-│-│2024/10/25(金) 08:58

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