アラカルト

『海之怪』 〜現代版の『遠野物語』〜

最近、北朝鮮の動きがまた慌ただしくなっています。一方で高浜原発が60年運転可能になったとのこと。技術的にクリアできているのかも疑問ですが、弾道ミサイルの落下点すら特定できない環境下で日本海の原発が安全などとはとうてい思えません。処理の問題も先送りやし、人類は工夫して原発に頼らない生き方を模索すべきと考えます。◆今日読了したのが写真の本『海之怪』です。釣り師の方が全国の海辺で起きた不思議な話をまとめたものです。最近発行されたもので、関心があったので生協で取り寄せてもらって読んでいました。この本は単なるオカルト趣味的に書かれたものではなく、かなり冷静に記述されているので民俗学的な聞き書きのようなスタイルをとっています。まさに現代版の『遠野物語』(柳田国男、1910)です(『遠野物語』といっても今の学生はまったく知りませんがね)。「おわりに」を読むと、著者の高木氏も『遠野物語』を意識していることが伺えます。ただ、研究者ではないので、場所や時期・話者の特定、あるいは話の類型化などはされておらず、おおまかな視点でまとめているにすぎない点が残念です。私は、柳田国男・ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)・南方熊楠と不思議な縁があるのと、2011年の震災を契機に自分がちょっとした体験をしたことを契機に異界については批判的な見方をやめ、少し肯定的に関心をもつようになりました。通常、こういう話は山里に多いのですが、これまで報告の少なかった海辺の事例を集めている点が特徴です。しかも、彼曰く海辺こそそうした話が多いとのこと。なぜなら、陸と海との「境」だからという。また、海辺は視界が広がるのでUFOの目撃談が多いとも。私の先輩に「境」の研究をしている方がおりますが、たとえば山里で妖怪を見たり狐憑きに合うのは調べてみると村境だったりするのです。現代は多くの人が平地に住むようになり、また科学や開発が進んで昔の地形が失われてしまったことで、人々から異界が消えていったのかも知れません。ただ、こういう不思議なことも含めて土地の歴史を認知・整理することが地域研究の基盤だとも考えています。

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│-│-│2024/05/30(木) 08:24

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