アラカルト

現代のジャータカ

この夏は、少し時間があれば能登の現況を確認しに行こうと思っていましたが、とても無理でした。そんな中、昨夜のNHK番組「家族に乾杯」が能登から生中継で現況を伝えてくれていて、しっかり観ました。まだまだ大変な状況が伝わってきます。その中で、ある方が「震災を体験したからこそ、被災地の大変さがよく分かる。それまでは他人事だった。」と述べていたのが印象的でした。◆その後、ドリフの特集をゲラゲラ笑って観た後に、「クレイジー・ジャーニー」という番組で、中央大学の大門正幸先生が911被害の前世記憶をもつユウくんという少年について紹介する番組があって、そのまま視聴しました。彼らは最終的にニューヨークのグランドゼロに行き、自分の姉だったと思われる人にまでたどり着きます。アメリカはキリスト教社会ですので、この手の話を拒否する人も多いですが、この方はお会いして下さり、ユウくんも落ち着いた感じになっていました。前世記憶や輪廻転生については以前はあまり関心を持ちませんでしたが、写真の『ソウルサバイバー』を読んでからは意識が変わりました。今の科学では説明がつかないことはいくらでもあり、それを無視するのではなく、私は民俗学のように「現象学」としての知見を学者が積み上げていく必要があると考えています。もちろん、いいかげんな事例やそれを利用する人もいるので、気をつける必要もあります。ちなみに、前世記憶についてはイアン・スティーヴンソン氏(1918-2007年)の研究が有名ですが、実は彼が研究初期に参考とした事例の中に、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)によって翻訳された『勝五郎の転生』が含まれていました。勝五郎は、江戸時代に実際に今の東京の日野市にいた子どもで、隣村の子どもの生まれ変わりとして当時から話題になった実話です。今でも日野市の資料館ではそのことを伝えています。古くは、仏教における「ジャータカ」があります。これは本生譚(ほんしょうたん)ともいいますが、簡単にいうとお釈迦さまの過去世の物語です。私の恩師である上原和先生は、法隆寺にある玉虫厨子に描かれたジャータカである施身聞偈図や捨身飼虎図について昔よくお話し頂きましたが、当時は布教のための想像の物語程度くらいにしか思っていませんでした。写真の『佛法東流』の口絵にはその図が掲載されています。ただ、科学が普及する以前の太古においては、さまざまな体験が語りつがれていたのかもしれませんし、やはり本当に体験した人でないと単なる妄想や他人事くらいにしか捉えないのかもしれません。

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│-│-│2024/09/17(火) 09:16

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